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「あたしの朝ご飯は」「勝手に作って」
キッチンには、食パンとレタス、ハムが並ぶ。
「トマトが欲しければ、冷蔵庫よ。好きな厚さにどうぞ」
「はーい」
食パンは軽くトーストして、バターも薄く薄く塗って。トマトは少し厚めに輪切り。レタスを敷いた上に、ハム、トマト。その上から、もう一枚の食パンを乗っけたら、あたし好みのサンドイッチが完成です。
ダイニングテーブルで、大口開けてかぶりついたら。
「それじゃあ、行って来ます」
準備を終えたまさ兄が声を掛けた。
口をもぐもぐしながらも、お見送りに出ると、靴を履いているまさ兄の背中。
…あれ? 何やら、違和感。
靴を履き終えたまさ兄が振り返ると、呆れ顔で「食べているのなら、無理に見送らなくていい」
それから、ポケットから出された一枚のカード。
「本屋に行くなら、使え」
未使用の三千円分図書カード。
太っ腹だね、まさ兄!
「ありやと」「口の中に物が無くなってから、喋るように。行って来ます」
さっさと出て行く、まさ兄。いや、でも。
自分なりに精一杯の咀嚼スピードで、口の中を空にしたものの、まさ兄には追い付くはずもない。
玄関先で立ち尽くし、頭の中を疑問符で埋めるだけ。
変装眼鏡、してなかったんだけど…素顔解放していいのかな?
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