あるひと冬の物語

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そろそろ、秋も終わりかな…。 最近、風がずいぶんと冷たくなってきた。 木々達も葉っぱがほとんど落ち、空の色もなんだか薄い。 僕は真っ白い猫。 野良猫じゃないよ。 僕にはちゃんと、飼い主がいる。 家の近くには公園があって、その公園にあるベンチの下が、僕のお気に入りの場所。 そこで、昼寝するのが好きなんだ。 今日もいつものようにベンチの下でウトウトしていると、何かが僕の視界に飛び込んできた。 僕は慌ててベンチの下から出た。 ……毛糸? それは、赤い毛糸玉だった。 視線をずらすと、何やら捜し物をしてる人がいた。 ……もしかして、これを探してるのかな? そう思ったのと同時に、その人はこちらに向かって走ってきた。 「あった!! よかった~。」 どうやら捜し物はこれだったらしい。 その人は安心した顔をしながら毛糸を手に取り、長い髪を耳にかけながらふっと視線をこちらにずらした。 「あっ可愛い猫ちゃん。」 可愛い? 僕のこと? キョトンとしていると、その人はベンチに腰掛け、袋から何やら道具を出し作業を始めた。 もしかして編み物? 僕の予想は的中しその人は慣れた手つきで作業を始めた。
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