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彼女が寂しい訳
「…私には、婚約を約束した彼がいるんです…でも、その彼が事故にあって…」
彼女はうつむいてしまった。
「そうだったの…。でも、助かったんでしょう? 」
その言葉に彼女は、うつむいたまま
「…はい。でも、事故にあってからまだ一度も、目を覚まさないんです…。もしかしたら、もう目を覚まさないかもってお医者様に言われてて…。」
マフラーを撫でながら、彼女はこう続けた
「本当は、一昨日が結婚記念日になるはずだったのに……。」
彼女は今にも泣きそうな顔で返事を返してきた。
「そう…。でも、きっと目を覚ますって、あなたは信じてるんでしょう? 」
その言葉に、彼女はハッキリと頷いた。
「…もちろんです。だから、彼が目を覚ましたら、このマフラーを渡すんです。彼、とっても寒がりだから。」
編みかけのマフラーをじっと見つめ、彼女は力強く言った。
「そうよ。信じなきゃ始まらないわ。私も信じてるわ。ねっコロ!」
「ニャー」
僕も信じてますよ、由紀さん。
「ありがとうございます。ありがとう、コロちゃん。」
そう言うと、彼女は優しく頭を撫でてくれた。
ふっと気がつくと、風が段々冷たくなっていた。
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