缶蹴り

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「土方さん。まだですか?」 「五月蝿い」 『収容所』から聞こえてきた声に、俺は不機嫌丸出しの顔で振り向く。 よほど人相が悪かったらしい、声をかけた藤堂は一瞬ひるんだ。 「俺たちにも手伝わせてよ」 藤堂の代わりに永倉が代弁した。 「そうだぜ。このまんまじゃ日が暮れちまうよ」 確かに。 ルール違反かもしれんが、それを言ったらずっと逃げ回っているあいつもひどい。 「わかった。副長命令だ。全員で鬼になり、沖田総司を探せ!!!」 「「「「おう!!!!」」」」 捕虜・・・もとい、隊士達は、『収容所』から飛び出すと、あちらこちらに飛び散った。 彼らもこの暑さの中、早く終わって欲しくなったらしい。 さあ、総司。もう逃げられん。 俺は缶の上に草履を載せたまま、にやりと笑った。
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