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「総司。……総司! …………総司!!!!!!」
時は二刻ほど前にさかのぼる。
何度も名前を呼ばれているのに、答えようともしないあいつにむかつき、
俺は総司が枕にしていた座布団を引き抜いた。
気持ち良さそうに眠っていた総司は枕を無くし、ゴンっと勢い良く頭をぶつける。
「あいたっ! ……もう、ひどいじゃないですか、土方さん! もっと優しい起し方してくださいよ!」
「…………俺の部屋で寝るな。それからほら、明日までに奉行所に提出しないといけない原稿。どうせ非番なんだから、手伝え」
あいつの文句たらたらはいつものことなので、俺は大して気にもせず、
総司の方に紙と筆を放り投げた。
「……………………」
いつもなら帰ってくるはずの「いじわる!」という言葉がない。
珍しく素直じゃねぇか。
と思って、顔を見ると、総司は膨れっ面のまま、恨めしそうにじっとこっちを見ていた。
「……なんだよ」
「……最近、私の扱いひどくありません?」
そう言った総司の顔はいつもみたいな馬鹿っぽさが欠片もなくなっていて、
えらく真面目で、気迫がある。
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