缶蹴り

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緑に囲まれた神社。 夏の虫たちの声が僕らを包んで、夏の空気は一層暑さを増す。  そんな暑さにも負けず、京の子供たちは毎日ここに来て遊んでいる。 「任務ですか?」 そうとなったら、彼のいうとおり遊んでいるわけには行かない。僕は気を引き締めて問うた。 「いや。お前がいつまでも遊んでるから」 「……だったら驚かさないでくださいよ。みんな怖くて逃げちゃったじゃないですか」 「……別にガキなんぞに好かれてもいいこと無いからな」 そう言うと土方さんは手拭を取り出して、僕に投げた。なるほど。これを届に来てくれたのか。 僕はありがたく汗を拭かせてもらった。 「……私だってこんな逆境にも負けず健気に活動しているんだから褒めて欲しいものです」 僕がまだぶつぶつ文句を言っているのに気付いているのかいないのか、彼は僕の隣から腰を上げると、ゆっくり石段を降りて興味深げに足元に落ちていた「モノ」を拾い上げた。
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