缶蹴り

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それはさっき僕たちが遊びに使っていた外国製の「缶」というものだった。異国の文字が彫ってある。 「なんだ、これは」 「缶です。さっきそれで遊んでたんですよ」 僕はさっき子供たちに教えてもらったルールを土方さんに教えてあげた。 「まず鬼を決めるんです。鬼は缶を蹴って、そこで三十秒数えるんです」 僕は砂地に棒で絵を書いて説明する。 「その間に皆は隠れます。始まったら、皆は機会を狙ってこの間を蹴りに行きます。 鬼は缶が蹴られないようにここで見張りながら、皆を見つけて名前を呼んでからもう一回缶を踏みます。 名前を呼ばれてしまった人は鬼の捕虜となってしまいます。缶を蹴ったら皆の勝ち、 その前に全員が見付かったら鬼の勝ちです」 僕は絵を書いた砂をぐしゃぐしゃと足で消した。 「ほう…………。総司にしては複雑なルールだな」 「『総司にしては』はよけいです!! …………やってみません?」 僕は意図的に下のアングルから土方さんを見上げた。 「やらん」 向こうも向こうで、意図的に目をそらす。
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