開花

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今でもしっかりと頭に焼き付いているあの姿。 『全く怖くなかった』 というより、何も考えられなかったのほうが正しい。 ただただ目の前の何か釘付けで、僕はしばらくその生き物(いや、死に者?)と目を合わせたまま。 あいつは眼球がないのに確実にこっちを見ていた。 鋭い視線が僕をとらえて放さない。 たぶんあれはきっとほんの数秒だったんだろう。 だけれど、あの時の僕にとってはその数秒がとても長い時間のように感じられた。
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