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その日、月は出ていなかった。
そのかわり、とまでには使えなさそうな壊れかけの街灯がついたり消えたりしている。
けれどその方が俺には有難い。
いっそ光なんざ今は要らねえ。
「…居たぞ!そこだっ!」
「…ちっ、しつけーんだよっ!」
肩に切り傷があろうが足に銃弾がかすっていようが、俺は走らなければならない。
何処に行くかも決めておらずただただ逃げる。
その間に追手はさらに増え、俺は再び舌打ちをした。
このまま走るだけではいずれ捕まってしまう。
俺は考えた。
成功率は五分五分。
…普段の俺なら成功率最低70%じゃねーと受けないのにな。
「…仕方ない、殺るか。」
追手が増える前に、全滅させてやらぁ。
「動きを止めたぞ、今だ!行けっ!」
ふぅ、と一息つき呼吸を正す。
銃は弾がもう無くなっていた筈なので、懐から二本のナイフを取り出した。
「…声は出さず、静かに逝け。」
月蝕の夜、只静かに血潮が舞った。
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