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啓吾と別れ、俺は建物の前で足を止める。青い屋根の一般的な一軒家。
それが俺の家である。
ポケットを適当に漁って金属製の鍵を取り出し扉に差し込んで中に入る。
「ただいま~」
つっても誰もいない。
暗いこの家に光がはいるかどうかは俺次第。
父親は仕事で海外。母親も似たようなもので、兄弟なしの一人っ子。
それを寂しいと思った事もないし欲しいとも思わない。それが俺にとっての普通だから。
家に入ると玄関の電気だけつけてすぐ側の階段を登る。
扉を開けると17歳の男子高校生には珍しい整った部屋。
物も整理されていて、ベットのシーツに乱れもない。
鞄を机に置き制服をハンガーにかけて、私服に姿をかえる。
それだけでやる事が無くなってしまった。
「つまらん……」
近頃はいつもそう。
帰ってからの時間の潰しかたに困っている。目下、1番の問題といえる。
金は毎月親から十二分に振り込まれている為バイトの必要はない。愉快に友達と遊ぶほど社交性に富む人間でもない。
暇に苛まれた頭は今日のある友人の話しに挙がったゲームを思い出した。
俺はなんとなしに部屋にあるパソコンを起動させる。
電子音と共に液晶に光が灯る。
電源をつけたはいいが、俺は重要かつ重大な問題に気付く。
「タイトル知らねえや」
致命的ともいえる。
俺は瞼をさげて友人の会話を蘇らそうと努める。
ふと1つのワードを思い出した。
俺は瞼を持ち上げてキーボードに指をつける。思い出したワードを検索欄に打ち込んでいく。
『オンラインゲーム』
打ち込み終えると検索を開始。数秒後、53万件ヒット。無料オンラインゲーム、攻略、情報、様々なキーに反応してヒットした。
その中でぱっと見めぼしいモノを探してクリックしていくが、どれもありきたりなモノばかり。
「……なにやってんだ、俺は」
見つからないとなると急激に自分の行動に嫌悪を抱いた。
暇に悩まされるのもここまでくると末期だな、とパソコンを切る。
再び目的をなくした俺はベットに倒れ込む。携帯に表示された時刻は午後4時30分。それを確認すると、俺の意識は微睡(まどろ)みに沈んだ。
瞼を閉じた記憶は――――無い。
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