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「――…ん?」
瞼越しに感じた光に目を覚ます。
「寝ちまったのか」
携帯で時間を確認。デジタル数字は9時20分を示していた。
そして次に確認したのは、暗い部屋に灯る光の根元。
『電源のついたパソコン』だった。
「あれ?」
瞼を閉じた記憶はないがパソコンは切った覚えがある。だけれど今こうして点いているのだから消し忘れかな、と俺は深く考えずに自己の中で解決した。
そこでぼんやりと淡い光を放つ液晶画面に注目すると、パソコンはインターネットに接続されていた。
再び湧き上がる疑問にベットから起きつつ内心首を傾げる。起こした体をパソコンの前まで移動させた。
「なになに……」
パソコンはあるサイトに接続されていて。俺はおもむろにそのサイト名を読み上げた。
「レッド、クレセント?」
正確には英語表記で
『Red crecent』。
直訳すると『朱い新月』。
右手でマウスを掴み動かす。反応を示した位置でクリックする。
途端、画面は真っ暗になり部屋を灯していた唯一の光を失い視界全てが暗闇に呑まれた。
ウイルスだったか?なんて心配をしたがそれは杞憂に終わる。何故なら、暗闇だった画面に再び光が灯り文字が表示され始めたからだ。
『よくきた勇者よ
さあ、剣を取れ
汝の力で邪悪なる魔王を滅ぼすのだ』
正直な感想を告げよう。
なんてちゃちな宣伝文句だろうか。きょうびこんな王道まっしぐらな紹介を使うゲームは少ない。
それとも逆にこれでレトロ感を出す事が目的なのだろうか。
俺はげんなりとした苦笑いを浮かべながら画面を下に送っていく。しかし、そこに記された文章の綴りを見た途端、自分で自分の表情が引き締まったのがわかった。
それはとても幼稚で馬鹿らしい。しかしゲームのユーモアにしては笑いづらい、そんな文章だった。
『ただ1つ忠告しよう
この世界のお前はお前自身
この世界の死は……
現実での死を意味している』
数秒、電気の点いていない部屋で電子文字の羅列を眺めてから、一番下にある『ゲームスタート』をクリックした。
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