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視界が暗転した。クリックした後、まばたきした覚えもないのに視界は暗闇。
気付けばベットも机もパソコンも、果ては床も壁も天井を消えていた。
「……不思議だな」
意外にも冷静を保てた。
慌てるといった感覚を久しく感じた事のない俺だったからかもしれない。
それはともかく此処は不思議な空間だった。先ほど俺はこの空間を暗闇と表現したが違った。
此処にきてから俺は始めからしっかりと自分の姿を目で見る事が出来た。
暗闇、例え薄暗闇でも光が足りてなければそれにすぐ気付く。
だから此処を表現するなら一面が黒色で埋められた空間だった。黒の床。黒の壁。黒の天井。
それがこの空間だった。
とまあ、冷静にかまけてこの不思議空間を分析してみたが何の好転もない。
途方に暮れる、というよりもこの味気ない空間に飽きが出始めた時、見計らったように声が聴こえてきた。
『ようこそ。二ノ宮 彰様』
それは声。男とも女ともとれない中間的な声。生とも音声機器を通した声ともわからない不思議なとしか言い表せない声。
『彰様のご推察通り、こちらの声は彰様の思念に直接働きかけています』
驚きを隠す。いまこの声の主はご推察通り、と言った。しかし俺はまだ一度もこの声の主相手に喋ってはいない。
「……思念ってのは?」
緊張と不安が押し寄せてくる前に俺は話題を振っておく。
『はい、思念とは心。
この声は現在彰様の心に直接響いている事になります。
それと、先ほどより彰様が気になさっている疑問ですがその通りです。
心に直接声を響かせる事が出来るように、彰様の考えている事もこちらに届いています』
ご親切にも嬉しくない情報を話してくれた。自分の心が丸見えなんて気分を害するほかない。
『ご質問はありませんね?』
心が読めているのだから勿論こうした俺の不快感も伝わっているだろうに。しかし声は先へと進める。
『それでは、ゲームの説明を始めさせて頂きます』
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