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白い部屋、薬品の臭い。白い固いベットに体を預け、その横に乃愛が椅子に腰掛けている。
じっと見つめる乃愛に俺は目をそらし、天井を見上げた。
保健の先生は何故かいなかった。代わりの先生もいなく、結局俺は無断でベット一台を借りてしまった。
独特の薬品の臭いが鼻を突く。
ますます気分が悪くなった。
だからだろうか、無意識にぽつりと呟いていたのだ。
「……俺、狂ってるかもしれない」
「え?」
俺の言葉に乃愛は目を見張った。
「前に夢の話をしただろ?知らない少女と俺が何か約束を交わす夢」
「うん。それがどうしたの?」
「あれから、毎日見るんだ」
「!毎日ってその夢を」
驚き声を上げる乃愛に小さく頷く。
「二度目の夢から、はっきりとしてきたんだ」
「何が?」
「色、相手の表情。言葉。だけど最も大事な所だけ声に雑音が混じって聞こえないんだ」
小さく溜め息を吐く。
「二回…同じ夢を見たけれど、たかが夢だからあまり気にしないようにしようとした。ただの偶然だと思う事にした。同じ夢を見るのは俺が疲れているだけだと。………だけど見るんだ。あれから何回も何回も……同じセリフ、同じ顔、同じ所で始まり、同じ所で終わり………、いつしか…俺は眠る事が怖くなったんだ」
唇を噛み締める。
眠気を振り切るように強く噛み締める。
「眠ってしまったら、またあの夢を見るかもしれない。怖い夢でもないのに、俺はあの夢が怖いんだ」
「清司」
「何かを訴えているようで…」
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