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小刻みに揺れる拳の上にそっと乃愛の手が重なる。
「っ!?」
自然に重ねられた手に、俺は言葉を失った。
「…怖いと思うから見るんだよ」
「乃愛?」
「清司さ。今頭が混乱して、この夢はその少女が俺に見せているんだって思ってるでしょ?その交わした約束を早く思い出せって」
「…そうだよ。誰が好き好んで同じ夢をみたいと思うか」
「でもさ。夢は自分の意志で見るもんなんだよ?それが見たくない夢でも自然と見てしまうんだ。だって普通に考えたら無理だろ?自分が見せたいものを相手に見せるのって」
「それは…」
言葉が詰まって何も出て来ない。
「清司、あまり悪い方向ばかり考えると、いつか壊れてしまうよ。清司は悪い夢だと思ってるかもしれない。だけど本当は良い夢かもしれない。だけどあまりに毎日見てしまって気味が悪いんだよね」
微笑み掛けられて俺は黙って頷く。
「でも、この夢はやっぱ実際昔体験した事だと最近になってはっきりわかったんだ…」
「何度も夢みたらはっきりしたから?」
「あぁ…、だけど何故今まで忘れていたんだろう」
天井を見つめながら言うと乃愛は当たり前のように言った。
「そりゃ、子供の頃に体験した事なんて忘れてる筈だよ。記憶って曖昧に出来ているから」
「そっか…、そうだよな」
安心した所でふと瞼が重くなる。
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