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最悪な目覚めだった。
まるで消化不良なエンディングをみせられたような嫌な気分で、俺は朝を迎える。
夢は目覚めると大体忘れているものだ。しかし嫌な夢やどうでもいい夢に限って、目覚めの時にリアルに頭の中に残っている。
俺が見た夢は嫌な夢でもどうでもいい夢でもないが目覚めた後でもハッキリと内容を覚えていた。
幼い自分と知らない少女が何か約束を交わす夢…
「約束……か」
無意識にぽつりと零すと横で新聞を広げていた親父が顔を上げた。
「約束がどうした?」
「な、なんでもないよ」
「ふふ、そんな意地悪な事言わないでよ清司。ママにも教えて」
「いやだからなんでもないんです」
朝から疲れさせる。
俺の親父と母さんはちょっとした事を呟くだけでも何かと敏感に反応してきいてくる。
子供の事を知りたい気持ちはよくわかるが朝からは止めて欲しい。
色々とお節介な部分がある両親だが、俺はそんな両親は嫌いじゃない。たまに反発したくなる時もあるが、心底嫌いにはなれないのだ。
「ふわ…」
欠伸が出る。
すっきりしない目覚めだったせいかまだちゃんと覚醒しきれていない。未だに頭の中が白い靄に包まれている。
瞼が重くのし掛かる。再び眠気が襲ってくるのはきっと目の前に温かな湯気を上げる朝食のせいだ。
良い香りは腹を刺激させると同時に眠気も襲わせる。
「清司、早く食べないと冷めるわよ」
「……いただきます」
しかしなんとか我慢して俺は朝食に手を付けた。
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