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「……」
朝食を口に運びながら、夢で少女が言った言葉を考える。
―約束だよ
(約束…)
頭の中で引っかかる。一体どんな約束を交わしたのだろうか。
少し焦げた玉子焼きを口に運ぶと同時に、激しいインターフォンが朝から家中に轟かせた。
「おっはよーございまーす!上山清司君のお迎えにきた柚木乃愛(ゆずきのあ)でーす」
「げ…」
「あら、もう乃愛ちゃんきたわね。残念。今日こそ清司を学校まで送ってあげようと思ったのに」
「いや、送らなくていいから。恥ずかしいし」
突然何を言い出すか。
「それじゃいってきます」
俺はそそくさと逃げるように家を出た。
正直腹はまだ満腹を満たしていない。
もう少し何か入れたかったけどアイツが来てしまったんだから朝食は中断。無視して食べ続けるわけにもいかない。
「女は短気だからな…」
ぶつくさ言いながら革靴を履き、ドアノブを捻る。朝の白い光と共に俺の視界にはアイツ…乃愛の笑顔で1日が始まった。
「おはよ清司」
「おはよ…、つか別に毎朝迎えに来なくていいのに…」
「何言ってんだよ。“僕”が迎えに行かなきゃ清司は今頃ゆっくり朝食だろ。そんな事になったら間違いなく遅刻」
「別に遅刻になっていいし」
「だーめ、僕は君の幼なじみなんだよ。君が遅刻なんかしたら僕に恥がかくじゃないか」
「なんだそりゃ」
柚木乃愛、幼なじみで同じクラス。どこにでもいる“女”……だが。
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