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夢と思う事にして楽になろうとしているのが自分でもわかる。しかし約束を交わした事自体思い出せないのだからどうしようもない。
「悪いな、変な相談しちまって」
「ううん、気にしないで。僕は夢占いとかはわからないから清司の夢についてなんとも言えないけどさ、あんま深く考えない事だよ。たかが夢なんだから」
「そう、だな」
「そうそう、…まぁ同じ夢を何度もみるってなったらさすがにただの夢じゃないって事はわかるけど」
乃愛はくるりとそう言って回った。
短いスカートがひらひらと目に止まる。
中が見えそうで思わず目をそらした。
「……スケベ」
にやりと乃愛は言う。
絶対わざとだ。
「恐ろしい女…」
微かに頬に熱を感じるのに気づかないふりをしながら、俺は足早に学校へ向かった。乃愛が後ろから何か言って大きな足音をたてながらついてくる。
口元が自然に笑む。
夢の話はなんの相談にも解決にもならなかったが、乃愛の言葉で少し吹っ切れた。
リアルな夢でしかも実際昔体験した出来事のようにまだどこか胸の奥で感じるが、もしかしたらその体験した事自体昔みた夢かもしれない。
「そう夢だ。そもそも俺は約束なんか交わしていない」
独り言のように呟く。
忘れよう。もう何も考えるな。これはただの夢。
少女も約束も、全て夢の空想に過ぎないのだから……
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