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「君のした事を、今は亡き妻の名を汚し、私の宝を奪った事を、私は許さない。」
僅かなんかじゃない。
男は金持ちの本意を悟った。
僅かなんかじゃ、ないじゃないか。
俺が感じたのは、言葉の節々から漏れ出る怒りの雫だけだったんだ。
この金持ちの怒りの化身は…
口から出る言葉そのものだったんだ。
男は金持ちの大きな怒りを知り、ヘナヘナとその場に座り込んだ。
「警備隊の長から話を聞いて驚いたよ。
まさか私のペンダントが売りに出されてしまったとはね…
しかも、よりによって裏の売人の店に。」
「……。」
男は何も話せない。
「私が頼めば、君を死刑にする事だって出来るんだよ、
金持ちの権力を甘く見ないことだな。」
金持ちはハッハッハと豪快に笑った。
豊かな口髭が口の動きにあわせて揺れる。
「……。」
男はまだ黙っている。
「だが死刑になんかしないし、罪に問うような事もしない。」
男はハッと顔を上げた。
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