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(金持ちから奪ったペンダントなんだ、見た目からして20万は堅いだろ。
とりあえず今日の晩飯は豪華になるな。)
法螺吹き男のバラ色の想像は、店主の一言で砕け散った。
「2千。」
男は全身の力が抜けるのが分かった。
「に…2千だと?」
「聞こえなかったのか?2千だ。」
男は掴みかからん勢いで店主に食ってかかった。
「そんなの嘘だっ!そのペンダントは金持ちが持っていた代物だぞ?2千なんて納得でき…」
喋っている途中に店主に口に手を当てられた。
尚も抗議しようとムゴムゴする男に、店主は少し黙れ、という視線を送り、口を開いた。
「よく見ろ、このペンダントは確かに金でコーディングされているが、小さな目立たない傷が無数にある。
確かにこれは価値が有りそうだ大切にされてたんだろうなぁ…いや待て、そんな目で見るな。
金と引き換えになるような価値じゃないんだよ。
もっと大事な…思い出とか、そういう価値なんだろうな。」
何を悪徳商人が温い事をほざくか。
…でも、確かにあの金持ちは最後の最後まで手放そうとはしなかった。
「あなたの亡くなった妻の念がこのペンダントに残っています。
このペンダントは私が供養しておきましょう。」
自分の話術を最大限に駆使してやっと手に入れたペンダント。
なのにその価値ときたら…
男は肩を落とした。
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