12694人が本棚に入れています
本棚に追加
/686ページ
‡ ‡ ‡
全ての授業が終わった。
連絡事項が特に無いことを告げ、担任は教室を去った。
エマは荷物を提げて真っ先に出た。
いつもならトレーニングルームに行く所だが、今日は何と無く気が進まない。
「よぉ、待ったぜ」
廊下の壁にもたれ、銀髪の少年が腕を組んでいた。
無視しようと思ったが、そういうわけにもいかず、視線を投げかける。
「何か用?」
素っ気なく問う。
「せっかくいい男が待っててやったのに、可愛くねぇ女」
彼は口に手を添え、小馬鹿にして笑った。
「用がないなら、構わないでもらえる?」
彼の機嫌をとろうとは思わない。
昼のこともあり、好印象は持っていない。
進行方向だけを見て、傍らをすれ違う。
「お前、力が欲しいか?」
彼は言葉を放った。
エマは足を止めた。
――チカラガホシイカ
考えるまでもない。答えは決まっている。
だから振り返る。黒い瞳に迷いは無い。
「欲しい」
セロは捻くれた笑みを浮かべた。
「ならば、お前に見せたいものがある」
最初のコメントを投稿しよう!