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重苦しい昼食を食べ終え、二人の少年は少女と別れクラスへと帰る。
その間フレイは張り詰めた顔で、終始無言だった。
「馬鹿だ、俺」
ぽつり呟く。小さく悔しさが滲んだ声で。
「何も何にも知らなかった。友達面して、こんな近くにいて」
ぺしっ。小気味よい音がした。
「あたっ」
フレイは額を押さえた。
「いいんだよ、それで。相手のこと詳しく知ればいいってもんでもないだろ」
セロはデコピンした手を下げる。
「蒸し返されたって平気な顔して前に進んでいく鋼の心臓を、あいつは持っている。だから、お前が気を病むな」
「わかってるさ。わかってるけど」
揺れる瞳で見上げる。
「ねぇ俺、どうすればいいのかな。何ができるかな」
必死の問いに、ははっと虚無な笑いを返す。
「お前がその貴族の代わりに頭下げるか?捜し出して復讐でもするか?
意味ねぇよ、そんなこと」
フレイは唇を噛む。虚しくて、情けなくて。
彼は人のことでも心を痛めてしまう。優しいからだ。優しい過ぎるからだ。その優しさは水のように透き通って清い。
「お前にできるのは」
そんな友人を労るように肩に手を置く。
「笑ってろ。いつもみたいに呑気に、ぽやぽやした顔で。この世に、辛いことなんてないみたいに」
フレイは口を尖らせた。
「なんだよ。まるで俺、世間知らずみたいじゃん」
「いいんだよ、それで」
その笑顔が曇るくらいなら、穢れた世界を知らなくていい。
「汚いものは全部、俺が引き受ける。だから、笑え」
太陽のような笑みは、全てを照らしてくれるから。
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