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――暇だなぁ
窓硝子に燃えるような赤髪と背中を預け、少年とも少女ともとれる人影はただただ佇んでいた。
くっきりしたアーモンド型の瞳は室内に向けられているものの、眠たいのか長い睫毛が被さる。
広い教室は明るい喧騒に包まれ、時折視界の端に火や電光が踊る。
ここはサルバラード共和国のブライスに位置する国立北魔法学校、Sクラスのトレーニングルーム。
一人楽々と課題をこなしてしまった彼……フレイは、奮闘する学友たちを尻目に欠伸を噛み殺していた。
彼はこの地を牛耳る大貴族カーライト家、現頭首の息子。
幼少の頃から魔法の英才教育を受け、生まれながらにして持ち合わせた卓越した素質で、授業で扱うような魔法はとうに習得済みなのだ。
本来この場にいる必要はないのだが、学校教育を受けるのが国民の義務なので仕方ない。
……とは言っても、まあ、それなりに楽しんでいる。
クラスメートの顔は小さい頃からの顔なじみ。つるむ仲間は気心のしれた、気のいいやつら。
同じSクラスいえど、それぞれの学力に開きがあるので、個人指導が主で、クラス主体の授業、つまりこんな憂鬱な時間は少ない。
――何か面白いことないかなぁ
いつの間にかうとうとと、白昼夢の世界へと誘われていたらしい。
自分はあこがれの伝説の勇者であり先祖、ホルスとなって、妖魔の群れに立ち向かう。
大剣は敵を薙ぎ倒す。呪文は敵を焼き払う。
ようやく待ち望んだチャイムが鳴り響く。
フレイは眠気を振り払おうと大きく伸びをした。
「行こうぜ、フレイ」
友人の呼びかけに応え、足を踏み出した。
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