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「そしたら親父がさ」
学友、もとい悪友が、多少大袈裟に父親のかつらに仕掛けた悪戯を語る。
数人から笑いが起こる。フレイも思わず吹き出した。
「さすが。よくやるよ」
「だって親父が悪いんだぜ」
フレイたちは賑やかに廊下を歩いていた。
いつもと変わらぬ日常。
だが、友人の一人が唐突に足を止めた。
「おい、アレ見ろよ」
少年が指差したのは、一人の少女。
進行方向は逆で、心無しか歩みが速い。
ローブはフレイたちの装飾のついた白と対象的に質素な黒。髪と目はそのローブと同色である。
次は剣術の授業なのだろう、練習用の剣を腰に提げていた。
この学校は平民と貴族が共学しており、黒ローブの平民は実力順にA~Gクラスに属し、白ローブの貴族は無条件にSクラスに属す。
貴族は物心ついてから魔法教育を受けているので、平民と机を共にできないというのが貴族側の言い分である。
しかし家庭教師を雇う余裕の無い貴族も、有る平民もいるわけで。
魔法の才能は平民貴族を限らず、全ての人が持つわけで。
それは、平民と共学するにあたり貴族が出したギリギリの妥協策に他ならない。
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