2078人が本棚に入れています
本棚に追加
至極当然の結果である。
「全く。いい加減にしてよね。」
ふんっと踵を返し戻ると京介はまだ固まっていた。
「ん?京介?」
「そこまでやる必要はなかったんじゃ…」
顔の前で手をヒラヒラさせてみると京介は口を開いた。
「いーの。あの人はあれくらいやらないと言う事聞いてくれないんだから。」
喋りながらソファに座る。
「でも…」
何か言いたげな京介。
でもね、あの人にこれ以上構うのは時間の無駄な訳。
「あのね、京介。私の兄貴は京介で言う椿さん。その意味、分るでしょ?」
京介に分りやすく奴を説明。
まぁ、実際は多分椿さんよりも厄介な人物だと思うがな。
京介は私のその言葉に少し考えると
「まぁ…うん。」
納得したようだった。
よし。
「それでね、京介。」
さて、馬鹿兄貴のせいでそれた話を元に戻す。
「パリ…の話なんだけど…」
とてつもなく言いづらい。
「……いけない。」
「え?」
驚く京介。
うん。
当然な反応。
「どうして?前回は高校生だったし学校ってのもあったし無理だったけど今回は「違うの。」
京介を遮った。
「違うんだよ。」
違うんだ。
そうじゃない。
「私もね、今日知ったんだけど短期留学の通達が来たの。」
場所はオーストラリア・シドニー。
「短期ってどれ位?」
「3か月。」
陸上の短期留学。
マジで有り得ない。
「ごめん京介。」
「なんで小雪が謝るんだよ。すごい事だよ、留学に行かせてもらえるなんて。」
京介は一度行ってるから分っている。
学校が行かせてくれる留学がどんなに凄い事か。
それに選ばれる生徒がどんなに名誉なことか。
「でも、また離れ離れになっちゃう。」
3か月なんて長いよ。
日数にしたら91日だよ。
無理。
「あんな思いまたしたくない。」
京介が留学に行った時。
すっごく辛かった。
苦しかった。
でも、それでも耐えて頑張ってこれたのは自分が日本に残った意味を果たすため。
京介の言葉があったから。
『好きよりもっと愛してる』
この言葉があったから。
戻って来たら結婚しようって言ってくれたその言葉があったから。
最初のコメントを投稿しよう!