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虫の声どころか、風一つない静かな夜。
いや、今は夜なのだろうか―――
異世界に隠されたこの屋敷では、外の世界の時間などわからない。
ただ空がいつ見ても暗いので、気分的に夜のように感じる。
そんな不思議な空を布団の中から見上げ、その皺くちゃの目元にさらにしわを寄せた。
「おじい様……」
「―――鷹夜か。」
鷹夜はまるで老木のようなその姿に一瞬息をつめるが、すぐに何事もなかったように近付いてくる。
布団におさまった、小さな体躯。
昔は艶やかな漆黒の髪だったのだが、今では見る影もない。
しかし弱々しいその姿からは想像できない、爛々と輝く瞳がカルマを捕らえていた。
「どうかした?
お腹でもすいた……」
「なんだ、お前はおじいちゃんの話し相手にもなってくれないのか?」
鷹夜に向かってニヒルな笑みを見せようとするが、激しい咳がそれを邪魔する。
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