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祖父のその雰囲気の変化に、鷹夜は息を呑む。
しかし直ぐさまいつもの表情に戻ると、ゆっくりと首を横に振った。
「覚えているわけがないよ。
だって、僕が3つの時の話なんだから……」
いかに聡明な孫でも、さすがに無理だったか―――
なんとも当たり前なことに何故か祖父は落胆しながらも、慈愛に満ちた視線を鷹夜に向けた。
「確かに覚えていないかもしれないが、お前が華野の当主だってことはわかるだろう?」
「―――うん。
だって、おじい様が教えてくれたから……」
それがどうしたの?と首を傾げる鷹夜に、祖父はゆっくりと口を開く。
「お前が生まれる前に父親は亡くなり、お前を生んでからすぐに母親も亡くなった。
だから、華野を継ぐのはお前しかいない。」
未だに、祖父が何を言いたいのかがわからない。
その深意を聞きたいのだが、どこか堅い声音の祖父の話を遮ることができなかった。
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