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ちらちらと舞う、白い粉雪。
いつもは青い空も、今日はお休み。
代わりとばかりに、暗い曇天が空を覆っていた。
「見て見て、お父様。
雪が降ってるよ。」
まりえは窓から身を乗り出し、降り注ぐ粉雪を掴もうと手を伸ばす。
しかしいざ掴んだと思っても、直ぐさままりえの手の温もりで水滴と化す。
「なんで……」
「どうした、まりえ。
そんな顔して―――寒いのかい?」
今にも泣き出しそうなまりえに、父は手にしていた新聞を机に置く。
そして自分が使っていた膝かけを持つと、そっとまりえの肩にかけた。
「お父様、雪が……」
「ん、どれどれ……」
ぐずぐずと眉を寄せるまりえの手を、父は後ろから覗き込む。
その小さな手には、同じく小さな水滴がいくつかついていた。
「雪が……消えちゃった。」
そう言って、まりえはさらに悲しそうに瞳を潤ませる。
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