5人が本棚に入れています
本棚に追加
「……何これ?」
「ハッピーバースデー、アイリス」
どうだと言わんばかりに笑うフォールに、絶対零度の視線を向けるアイリス。
「……この前の埋め合わせのつもり?」
「ああ、オレの髪と同じ色なんだぜ? 全く、自分のセンスの良さに目眩がする……」
この前……それはアイリスのバースデーパーティの事だ。
CIAの仲間と協力して盛大なパーティを開いたフォールは、最後の最後で彼女へのプレゼントを忘れていた。
パーティで陽気だったアイリスはこれにブチキレ、彼が用意したバースデーケーキの上に彼をバックドロップ、という結果になってしまったのだ。
「……アンタに預ける書類をまとめるのに使わしてもらうわ」
「っておいおい、勘弁してくれ」
結局アイリスはそれを使わず、持参した方で髪を束ねた。
TPOも関係なしに会話を弾ませる2人は、やがて水路が通っている裏道に入る。
上下水道が整っていないせいか、酷い臭いがたちこめていた。
「く~、臭ぇ! 鼻がまがっちまうぜ」
フォールは思わず鼻を摘む。
「そうね。あなたの家といい勝負だわ」
「待てアイリス。局所的じゃなくて、オレん家全部が臭ぇってことか?」
そして2人は裏道の出口の前で立ち止まり、互いに顔を見合わせた。
最初のコメントを投稿しよう!