199X年 8月10日

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「……何これ?」 「ハッピーバースデー、アイリス」  どうだと言わんばかりに笑うフォールに、絶対零度の視線を向けるアイリス。 「……この前の埋め合わせのつもり?」 「ああ、オレの髪と同じ色なんだぜ? 全く、自分のセンスの良さに目眩がする……」  この前……それはアイリスのバースデーパーティの事だ。  CIAの仲間と協力して盛大なパーティを開いたフォールは、最後の最後で彼女へのプレゼントを忘れていた。  パーティで陽気だったアイリスはこれにブチキレ、彼が用意したバースデーケーキの上に彼をバックドロップ、という結果になってしまったのだ。 「……アンタに預ける書類をまとめるのに使わしてもらうわ」 「っておいおい、勘弁してくれ」  結局アイリスはそれを使わず、持参した方で髪を束ねた。  TPOも関係なしに会話を弾ませる2人は、やがて水路が通っている裏道に入る。  上下水道が整っていないせいか、酷い臭いがたちこめていた。 「く~、臭ぇ! 鼻がまがっちまうぜ」  フォールは思わず鼻を摘む。 「そうね。あなたの家といい勝負だわ」 「待てアイリス。局所的じゃなくて、オレん家全部が臭ぇってことか?」  そして2人は裏道の出口の前で立ち止まり、互いに顔を見合わせた。
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