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「あそこか?」
「そうみたいね」
2人は裏道から、そろって顔を出す。
そこには全体的に暗い、大きな建物があった。
廃れた家などが立ち並ぶ街に、綺麗な外壁、手入れがいき届いた庭、彫刻つきの噴水があるこの建物は、どう考えても不釣り合いだった。
「ヒューいいねー。男ならこれくらいの豪邸、構えてみてーもんだぜ」
庭をうろついているゴロツキの数を数えながら、フォールは口笛を吹く。
「……そろそろ時間よ。お喋りはおしまい」
「……りょーかい」
やがてアイリスに促され、彼は持っていたスーツケースの蓋を開ける。
中には、通信用のマイクつきイヤホン。ピストルに予備の弾丸ケース。そして画面が少し横に長い携帯電話だ。
その全てが2つずつケースに収まっていて、2人は手慣れた様子で身につけていく。
「……よし、サンダース。サンダース聞こえる?」
全てを身につけ終わったアイリスは、イヤホンのスイッチを入れた。
そして、パソコンの前でくそ真面目に連絡を待っているであろう、七三分けの男の名を呼んだ。
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