三章

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三ヶ月がたった。 いつになっても雨は降らなかった。三人の水と食糧はもう底をつきかけていた。 「まずいな。」 と棚山はポツリと言った。他の二人は精神的にも身体的にも限界が近付いていた。話しかけても反応がない。 残ったのは俺だけか。棚山は二人に毛布をかぶせた。 最近棚山は雨雲がずっと来ないことを疑問に思っていた。たぶん、やつらの仕業だ。 もうこれ以上二人に迷惑はかけられまいと、棚山は一人で敵の本拠地に足を運ぶことにした。 本拠地の名はサンライズビル。太陽が綺麗に見えるのが有名なビルだった。そして彼が捨てられていた場所。その高さは東京タワーの約三倍。くもを吸い込むのには十分の高さだ。覚悟を決めて中に足を踏み入れる。中は湿気がほとんどなく、人間には息も出来ない空間だった。不思議なぐらい、いや、不気味なぐらい静かだ。嫌な予感はするが先へ進む。タワーは100階だてで、90階からは階段でのぼらないといけない。かなり骨がおれるが、棚山はエレベーターに乗り込んだ。 中には火星人にのっとられている人が数人いあわせた。が、互いに目もあわせずそれぞれの別の階で降りていった。 棚山も無事90階についたので降りる。後は敵襲の来ないことを祈るばかりだった。 あまり音をたてないように階段をあがる。さすがの棚山も体力の限界が近い。 100階に続く階段の前で、棚山は足を止めた。 前にモニターに写っていた棚山の父親がいたのだ。棚山をなんとも言えないかおで見つめている。黙って通り過ぎようと棚山がすれちがったとき、棚山の父親が言った。 「鍵はあいていないぞ。私が持っている。」 棚山はばっとふりかえり、言った。 「あんたには関係ないだろ。」 しかし、父親のほうは鍵を取り出して扉を指さす。「手を、貸してくれるのか?」 少し間をおいて言った。「あぁ。お前の星を、私たちに潰す権利はないのだから。そう。かつて地球人が私たちの星にしようとしたように。」 「でも、あんたが反逆者になってしまうんじゃ…。」 「構わん!!お前が幸せに暮らすのなら。」 「……。行こう。」 棚山は言って、父親の後ろについた。父親はすかさず鍵を開ける。 ガチャっと音が鳴って扉が開く。最上階までは後少しだ。
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