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*伊吹side*
華恋が来た。
この栄蘭学園に。
俺のプリンセスとなって。
俺の手の内に華恋がいる。
こんな幸せな事はあっただろうか?
考えるだけでにやけてしまう。
目の前に華恋がいる。そう、愛しい華恋が。俺の手の届くところに。
つい笑ってしまう。
「ため息ばかりつくと幸せがにげてしまいますよ?」
華恋はさっきからため息ばかりついていた。いろんな事があったから疲れているんだろう。
俺がそういうと華恋はもう幸せなんか逃げている、と不機嫌そうに言った。
そのふてくされた表情が可愛くて、俺はクスクス笑いながら「俺は幸せの絶頂ですよ」と返した。
そう言うと華恋はよりいっそ不機嫌になった。
可愛い。
華恋は可愛い。
気取らないし良く見せようとしない。
他の女とは大違いだ。
俺がしばらく華恋を見ていると華恋は不思議そうに顔を触っていた。
自分の顔になんかついているのかとでも思っているのだろうか。
微笑ましくて笑うと華恋は頬を膨らませた。
風呂に行こうとすると華恋は気の抜けた声をだした。
からかいたくなって「一緒に入りたいの?」と聞くと華恋は顔を真っ赤にして「ありえないッ!」と叫ぶ。
可愛い。可愛くてたまらない。
俺はきっと病気なんだろう。
つくづくそう思う。
俺はこれから先、華恋以外を愛する事は無理だろう。
華恋、お前の無邪気な笑顔が、気取らない態度が、その優しさが、俺をどれほど救ってくれたか。
華蓮、俺はずっと昔から
お前の事を――――。
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