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家の扉をガチャリと開けて外を伺うと
「早くしなさいよ……!」
と挨拶抜きで俺を急かす幼なじみの遠川理彩(トオカワ リサ)。
長い黒髪が印象的で大人っぽさが出ている彼女は頭脳明晰で容姿端麗という存在なのだが小さい時から俺なんかと一緒にいてくれる。
高校だって俺も必死で勉強したが、理彩はレベルを落としてまで俺と同じ高校に来てくれた。
理由を聞いても「うっさいわね……」と言われ彼女の機嫌を損ねるから聞かないようにはしているけれど正直まことに有難い。
「悪い。もう出ようとしてたんだ」
と言って鞄を掴み家を出る。
「行こうか。待たせてごめんな」
俺は彼女の横に並ぶ。
「これ位は許してあげられる範囲内よ」
理彩はゆっくりと歩く。
無言で歩く事数分。
長い沈黙なんてここの所なかったから慣れない。
「同じクラスになれたらいいな」
沈黙を破り俺は言った。
偶然見つかった話題の提示はこれ位。
「私はもう腐れ縁は切りたい位だけど……!」
ふんっと言って歩き続ける理彩。
時々ツンケンする所も前から変わらない。
「前から何回もそんな事言ってたんじゃないか?それに今日だって迎えに来てくれただろ」
そう言われたのは実際もうこれで何回目だろう?
「そ、それはなんだかんだ言っても英一が心配だから……」
ツンと今度は横に顔を向けてから小声で言う理彩。
「いっつも感謝してるって」
答えて俺は微笑する。
その言葉は嘘ではなく、何度も彼女には助けられた。
「感謝位してもらわないと心配しがいがないじゃない。当然よ」
理彩は少し上を向き流れていく微風を受けた。
長い黒髪がさらさらと後ろに流れる様子に不覚にも綺麗だなと思わされてしまう。
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