一 夢人ヲ想フ

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(全てはあの夢がきっかけだった。あまりにも残酷で、そして……あまりにも悲しすぎるあの夢が……) 一つの夢。 それが、この青年法師の心に深く鮮明に残った。 残酷で悲しい夢。其は、ある人物の記憶。 忘れたくても忘れられぬ強い想いを秘めし者の、過去の残骸ー 大きな狼犬が森の中を疾走(はし)っていた。 その背に二人の人物を乗せて…… 一人は髻(もとどり)を結い上げた長身の男。 そしてもう一人は、まだ少女と呼ぶに相応しい若い娘。 自分の前に乗る少女に何事かを言いながら、男は一瞬後ろを振り返る。 点々と松明の灯が、暗い森の中に浮かんでいた。 『追え!逃がすなっ!!』 叱咤する声が、夜の闇に響く。 松明を手に、大勢の男達が前を行く彼等を追っていた。 苛立ちと怒号の中、一人の男が走りながら己の背から何かを手に取った。 松明を地面に投げ捨て、前方に向けてそれを構える。そして、男の手から鋭い光が放たれた。直後ー ドサッ!
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