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『どうした?そんな小娘、さっさと始末してしまえばいいだろうに……』
背後から低い声が聞こえ、途端にザッと男達は左右に分かれた。
『それとも……怖いのか?その男の血を引く娘が』
嘲笑に似た笑いを漏らしながら、一人の男が人垣によって出来た道の中に現れた。
長い髪を頭上で結わえた中年の男。
その言葉に、誰一人として答える者はいない。
そんな者達を一瞥した後、傷口を押さえている男へと視線を移す。
『無様なものだな、煌輝殿。どんな気分だ?己が守ってきた者達に殺されるというのは』
『…李、天……そなた、何を吹き込んだ……?』
『吹き込む?私は何も。全ては、この者達が決めた事。「化け物退治」をすると……。私は、それに加勢してるにすぎない」
化け物……
その一言に、少女・朱羅の肩がピクリと震えた。
『この者達は、煌輝殿を一族の長にはしておきたくないと言っている。当然だろう。自分達とあまりに掛け離れている者に、一族の命を預けるなど、とても恐ろしくて出来よう筈ないだろうからな。不可思議な能力で人の心を惑わす化け物。と、貴方を恐れているぞ、煌輝殿』
『違う!父様は化け物なんかじゃない!!いい加減な事を言うなっ!!』
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