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『嘘だと……?ならば訊いてみるがいい。自分自身の言葉で、この者達に』
怒りの形相で睨んでくるその眼光に臆する事無く、李天は嗤った。嘘か真実かすぐに分かる。と……
『嘘だろう?』
誰にともなく問い掛ける朱羅。一人一人の顔を見つめながら……
『全部、この男の指図なんだろ?父様を殺すなんて……本意じゃないんだよね』
朱羅は待った。自分が望む答えを誰かが与えてくれるのを。だが……
『嘘じゃない。真実(ほんとう)だ』
一人の男が、一歩前に歩み出た。
まだ若い、そう……朱羅と同じ位の年頃の少年。
『十夜……』
目の前に現れた少年に、対の瞳が戸惑いに揺れる。
『十夜。今、何て……?』
『俺達はこれ以上、煌輝様に長を任せる事は出来ない。だから―』
『何故だ。理由を言え!!』
ガシッと少年の胸倉を掴み、射るような視線を浴びせかける。だが、少年の顔には感情の色は見当たらない。冷めた、否……無表情とも言える眼差しで目の前の少女を見ていた。
『何故だと?ならば教えてやる。俺達は「人間でないモノ」に長の座にいてもらいたくない。お前の父は人間だとは言えない。それは誰の目にも明らかだ。普通の者には有り得ぬ力を持ち、尚且つ老いる事も無い。そんなモノに、一族の命運を預けてはおけないと言ってるんだ』
『今更何を言う!父様は、ずっとお前達を護って来たんだっ!なのに……それなのにお前達は、恩を仇で返すというのか!?』
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