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怒りで、小刻みに震える手。
それを、十夜と呼ばれた少年はいともたやすく払いのけた。
『分かったろ。お前の父は、俺達にしてみれば得体の知れぬ存在。故に、新たな長には李天様に就いてもらう』
そうだろう?と、周囲(まわり)の者達に同意を求める。とー
『ああ、そうだ。化け物なんかに一族を任せておけるもんか!』
『今まで老いなかったのは、皆の生気を吸い取ってたからに違いないっ!!』
静寂が、そんな罵詈雑言で破られた。
弾かれたように口を突いて出る言葉。それらは皆、朱羅の心を刔るもの。
今まで、ただの一度として聞いた事がなかった。昨日までは、互いに助け合ってた仲間だというのに……
これが、答え。
口汚く罵るこの言葉が……
『聞いての通りだ。この者達は、自らの意思で動いてるだけ。もはや、一族の中にお前達の味方などいない。十夜』
トドメの言葉を放った後、李天は視線を朱羅に向けたままに命じた。
『その男を殺せ』
コロセ…
ころせ…
殺せ。
李天の声が、頭に鳴り響いた。
(殺す……?誰を……?)
その思考は、キリキリという音によって遮られた。
ハッとし、目の前を見遣る。とー
『邪魔だ朱羅。お前まで殺すつもりはない。そこを退け』
少年の瞳は、朱羅の背後を捉えている。
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