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十夜が何をしようとしているのかようやく理解し、バッと両手を広げる。
『退け、朱羅っ!』
『退かない!』
『何故庇う!?その男は化け物、人間ではない!』
化け物。
その言葉に、朱羅はキッと少年を睨む。
『父様は化け物ではない!同じ人間だ!!』
どうして?
偶然持って産まれた力故に、何故殺されなくてはいけない!?一族を護る為に使ってきた力なのに……
何故、こんなにも簡単に弓引く事が出来る!?
『どうしても殺すというなら、私ごと射抜けっ!』
『く……っ』
弓に番えたまま、十夜はその矢を放つ事が出来ないでいた。朱羅ごと、背後の者を射る事が……
するとー
『朱羅……もう、いい……』
掠れた声と腕を掴む感触に、朱羅はハッと振り返る。
『父様……』
『もう、いいんだ……これ以上、十夜や、皆を責めないでくれ……』
血の気が失せ、気力だけで意識を保っている父。
その口から発せられた言葉は、朱羅には理解する事が出来ないものだった。
『どうして……?皆は、父様を殺そうとしてるのに……どうしてそんな事が言えるのっ!?』
『朱羅……』
『力があるだけで、何で殺されなきゃいけないの?父様のおかげで、平穏に暮らせていたのに……その恩を裏切りという形で返そうとするこんな奴らに、どうしてそんな事が……っ』
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