僕の使命

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「私達って何のために生きているんだろう」 この世界の神秘について、語り合う思春期の仲間たち。 それは宇宙の神秘。命の神秘。そして人生の神秘。 「きっとみんなひとりひとりが、何か使命を持って生まれてくるんだよ」 「使命って、どんな?」 目を輝かせて、ボサボサ頭の女の子が問いかける。 「だからそれを見つけて成し遂げるために、俺達は今生きているんだって!」 坊主頭でつり目の男の子は、まるで世界の真理を悟ったかのような自慢顔。 クラス全体がワイワイと騒ぎ出す。 未知を想像することが、みんな何よりも楽しかった。 だから自分の生きている理由を探すのにも、必死だった。 「あー、じゃあ私の使命って何なんだろう?」 「それ見つけねえと、人生の価値が無いもんな!」 「ホントに、そうかな」 一瞬の沈黙が起こった。 坊主のつり目に意見した少年に、みんなの視線が集まった。 それは、少し前に都会から転校してきた少年だった。 「なんだよお前。自分の生きる意味が分かんなくたっていいのか?」 つり目の坊主は少年に言葉を返す。 一斉に視線を浴びる少年は、ちょっと困った顔で言った。 「いや、・・・ごめん」 「アイツ、よく分かんねぇ」 放課後。昼間の活気がウソのような教室で、つり目の坊主がボサボサ頭の女の子に話している。 「まだ、あんまり私達とも話さないしね」 「何考えてんのか分かんねぇから、こっちだって接しにくいんだよ」 「・・・んー・・・」 ボサボサ頭は少し考えて立ち上がり、帰り支度を済ませたカバンを右手に教室のドアを開いた。 「でも、優しい人だよ」 ボサボサ頭は校舎から駆け出し、走り続けて少年に追いついた。 そして向かい合うなり、だしぬけに少年に尋ねた。 「ねえ、なんで昼間あんなこと言ったの?」 「・・・え」 突然の出来事に困惑している少年。 それに気付いて、ボサボサ頭も少し我にかえって言った。 「あ、帰り途中まで同じだから、そこまで一緒に帰ろう」 未知を想像することが、みんな何よりも楽しかった。 だから自分の生きている理由を探すのにも、必死だった。 だから少年の言葉が、みんなには理解できなかった。
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