[出会い]

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「ふぅ、いいお湯でしたぁ。」 少女が頭をタオルで拭きながら部屋に入って来た。 「あれ?王子様は?」 部屋を見回すが誰もいない… 「…誰が王子様だ、めんどくさぃ。」 「ぅひゃう!!!」 …と思ったら、木で作られている椅子に座り紅茶を飲みながら本を読むセーファスが声をかけた。 「…どうした?」 「ど、どうしたじゃないですよぉ!いないと思ったら急に現れてびっくりしましたですぅ。」 少女が胸を撫で下ろしながら言う。 「…?。ずっとここにいたが。」 セーファスの言う通り、少女が部屋に入ってきた時から本を読んでいたのだ。 「ほへ?そうなんですかぁ。すごいですぅ!」 「…そうか?…俺は何もしていないが…。」 そうです。ただ影が薄いだけです。 「とにかくすごいんですぅ。 ところで何読んでいるんですかぁ?」 少女が分厚い本を指さしながらたずねた。 「…魔法大辞典。」 「魔法大辞典ですかぁ!!? すごい本を読んでいるんですねぇ!!」 魔法大辞典にはこの世界…-イルシオン-に存在する魔法の全てが記録されている。 「………………やっぱりないな。」 セーファスは呟くと本を閉じた。 「何がないんですかぁ?」 「………なんでもない。」 セーファスは少し迷うような表情を見せたあと、キッチンへと歩いて行った。
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