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お母さんはお父さんを愛している。
そして未だにお父さんに恋をしている。
お父さんがいなくなった『あの夜』から、毎晩の様に私にお父さんの魅力を話しかけてきたお母さん。
まだ幼かった私には、そんな言葉はただの強がりに見え、だから聞けば聞くほど私はお父さんを嫌いになった。
せめて私だけでもお母さんの自慢でいたい。
そう思って不自然なくらいに良い子を演じると、お母さんは崩れるように泣き出し、思い通りに私を信じこませようとする。
どうしても娘にお父さんを愛している事を信じさせたい。
私はお母さんの自慢でいたい。
二人の思いはお互いの愛情と共に何度もすれ違った。
「このままだとお母さんが心労で倒れてしまうよ?」
誰かに言われて私は人を守る為の嘘を覚えた。
「お父さんはお母さんを愛しているから出て行ったんだね。そしてそんなお父さんをお母さんは愛しているんだよね。私は二人に愛されて産まれきた。だから幸せな家族なんだね。」
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