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「さっきの人は?」
彼は唐突に訪ねる。
聞かれるとは思ってた。
でも、できるなら聞かないでほしかった。
「……夫だよ。年明けに結婚したんだ」
「そっか……そうだと思ったんだ」
予想していたのか彼に動揺は無かった。
婚約指輪もしているし、まぁ彼なら気付いて当然かな。
それっきり気まずい沈黙が流れる。
彼は今、どんな気持ちなのかな?
悲しみだろうか?
怒りだろうか?
それとも何も感じてない?
もし、何も感じないなら、それはちょっと悲しい……。
我ながら自分勝手な考えだと思うけど。
「……僕達の関係は変わったけど、ここの桜は何も変わらないね」
「……そうだね、本当にここは……何も変わらない」
桜はひらひらと私達に降り注ぐ。
あの頃と同じように。
私達の再会を祝福するように。
唐突に理解する。
あの小さな『彼』はこの桜が見せた幻なのだと。
私達の再会は偶然じゃなく、必然なのだと……
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