幻に導かれた再会

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「明里」 彼は真剣な顔で私を見ている。 何故か次になにを言うのかわかった気がした。 「明里、僕は……君の事が好きだった」 好きだった人からの告白は不思議と動揺はなかった。 それが少し、ちょっとだけ、 悲しかった。 私も後悔しないように言わなくちゃいけない。 「貴樹くん、私も……あなたの事が好きだった」 あの日、あの手紙に書いたこと。 ずっと言えなかった事。 それを言っても私達の関係を変えることができないのはあの時と同じだけど、意味はあると思う。 「ありがとう、凄く嬉しいよ…………でも、僕と明里の時間は違う速さで過ぎている」 「だから、きっと私達がもう会うことは二度とないんだろうね」 拒絶でもなく受容でもない。 『私達』の初恋の終演だった。
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