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外に出てみると改めて春がきたんだなぁ、と感じる。
空気はどこか甘く感じ、陽射しも人肌程度に暖かい。
彼も似たような事を感じたのか、両手を空に上げ背筋を伸ばしている。
どうやら春を満喫してくれているようだ。
「それで、何処に行くんだい?」
彼は思い出したように訪ねる。
「う~ん、行ってからのお楽しみかな?」
「へぇ、君がそんな事を言うなんて。期待できそうだ」
「うん、楽しみにしてて」
きっと彼もあの桜並木は気に入ってくれる。
……それにきっと『彼』もあそこに向かっているのだろう。
さっきから視界のでゆっくりと、差が縮まらない程の速さで歩いている。
さっき追いかけたら走って逃げてしまった。
それなのに、私と彼が何処かに立ち止まると、はやくはやく、と私を急かす。
彼には『彼』は見えてない。
さっきも
「何を見てるんだい」
と言われてしまった。
慌てて、
「桜の妖精かな?」
と答えたらお腹をかかえて大笑いしてた。
まぁ当然の反応かな。
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