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足を止め、ゆっくりと振り返る。
周りの時間が止まっているように感じた。
振り向いた先にいた彼はあの頃と随分変わっていた。
背丈は随分高くなってたし、容姿も大人っぽくなってる。
当然だろう。
あれから十四年経ったのだから。
だけど、彼が纏っている空気はあの頃とまったく、何も変わっていなかった。
話したい事はいっぱいあった。
だけど、何から話せばいいのかわからない。
『後悔しないで……』
ふと、あの言葉を思い出す。
そうだ、きっと『彼』はこの事を言っていたんだ。
あの時、駅のホームで彼を見送る時、私は言いたい事を言えなかった。
後で何度も後悔した。
また同じ過ちを犯すわけにはいかない。
だから勇気を出して話しかける。
「久しぶり、貴樹君」
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