谷町初美

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友達なんていない。 作ろうと思ったこともない。 ファッションやドラマの話で無難に盛り上がって、「好きな人がかぶった」なんて理由で簡単に相手を裏切る。 なんて不安定でもろい関係なんだろう。 くだらないな。 「谷町、日誌書いてよー」 終礼が終わると、同じ日直の森宮が上から目線の態度で言う。 「いいよ」 差し出された日誌を無表情で受け取る。 「どーもー」 軽々しく礼を言うと、森宮は仲間と一緒に教室を出て行った。 くだらないな。 数秒前の言葉を心の中でつぶやく。 クラスに馴染まずに孤立して、言われたことにはあっさり従う私を見て、クラスメートはきっと、私を「暗いやつ」「都合のいいやつ」なんて思って見下してるんだろう。 逆なんだよ、本当は。 私があんたたちクラスメートを見下しているんだ。
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