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どれぐらい、眠っていたのだろうか?
那岐はゆっくりと瞼を開けた。
見たこともない天井。
そして光景。
ウォーターベッドのようにベッドの感触は気持ちがいい。
ゆっくりと体を起こした那岐は、寝ている時に泣いていたのだろうか。
頬が濡れていることに気が付いた。
(悲しい夢でも見たのかな?)
良く覚えていない。
紅蓮と一緒にここに来た途端、那岐は気を失った。
精神的に疲労していたのだろうか。
そのまま眠っていたようだ。
周囲を見渡しながら、那岐はベッドから降りた。
暑くもなく、寒くもない。
厚いガラス一枚に覆われているかのように、壁に視線を向けると水が左右に動いているのが判る。
(懇親の力を込めて叩き割ったら、洪水になるのかな?)
そう思いながらジーッと見ている那岐に、背後から声が降ってきた。
「お目覚めですか?水流様。」
「えっ?」
那岐の名前ではないが、呼ばれている気がした那岐はクルッと背後を振り返った。
後ろには水色のウェーブ掛かった長い髪の、穏やかな表情の女性が入り口のところで立っているのだ。
薄い布を何枚も重ねて着ている彼女を見て、那岐は目を大きく開けたまま驚いている。
何故なら、目の前に立っている女性を那岐は夢の中で見たことがあるからだ。
夢で見たのとは違い、彼女は穏やかな表情で那岐を見ていることだ。
(確か、泣いていた気がする・・・。)
一人、考え事をしていると女性はニコッと笑いながら頭を下げて自己紹介を始めた。
「申し遅れました。私は水の精霊神である水流様に仕えています水の巫女。水無瀬と申します。」
「こちらこそ!水嶋那岐です。」
「那岐様ですか。今後は那岐様と及び致しますね。私のことは、水無瀬と呼んでください。」
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