電動ドリル

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電動ドリル

いつの間にか 工場が始まっていて 電動ドリルがこころを突き刺した 粉々になるまで ドリルは動きつづけて 立ち上がることさえままならない せっかく 君がいてくれるのに うれしくも何ともない 急速に こころが破壊され わたしはわたしでなくなる 目の前から 色彩が奪われて 足元が真っ暗になる なんにもない 助けの叫びも意味をなさない 手元にはこころの暗闇がある 恐る恐る 暗闇を覗けば 不気味にほほえみ返される そして ただ自然のままに わたしは発狂するしかない そうして 少しずつ少しずつ 歯車が狂い始めていく その間も 電動ドリルは 動きつづけている
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