流星群

1/1
前へ
/101ページ
次へ

流星群

おだやかで とてもやさしい日々が もうすぐ終わろうとしている   のんびりした 鈍行電車に乗り込み 初めて見る景色に胸躍った   奥へ行けば行くほど いくつもの山が連なり ずっしりとそこで構えていた   向かった先は 本当に山のてっぺんで 険しい道を通り抜けていった   そこは 他とは違う雰囲気を纏い 流れる時が止まっているよう   訪問者に対し 何ひとつ文句を言わず 両手を広げ抱きしめられた   そして 夜になれば見たこともない たくさん星々を披露してくれた   いつもは 見えない星々が 一面に撒き散らされていた   思わず 表情がゆるみ 星々にうっとりしてしまう   誰が頼まずとも 最高のもてなしを 散りばめてくれていた   しかし そんな日々は 本当にあっという間で   今日は さよならを 言って去る日   もっと ここにいたいけれど 時間は残酷なものだった   さあ 現実へと 帰っていこう   手を引かれ どんどん遠くなっていく また会える日を想うしかなくて   いつか また来れるだろうか てっぺんまで行けるだろうか   さよならは 言わないでおく きっといつかまた行くから   その時まで ずっとあの世界が 変わらずにありますように   嗚呼 この願い事も あの流星に願えばよかった
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

107人が本棚に入れています
本棚に追加