第1章:出会い

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「ダメだ」 ジークは少年の最後の意思すら、否定する。 「言っただろう。お前は俺の暇つぶしだ」 その声は少年に届かない。 「お前は逃がさない」 少年が残した最後の希望は、その願いを叶えはしなかった。 何処へとも分からず、帰らなくてはと願ったのに。 その夜は少年が連れてこられたのと同じ、酷い嵐だった。 ジークの館では召使いたちが忙しげに働いていた。 最後の希望を失った少年は、召使いによって身なりを整えられ、大広間の横にある、控えの間にいた。 再び声を失って。 けれど、誰も気にすることはなかった。館では、少年が壊れているのは周知の事実だったからだ。
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