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それからの暮らしは、まるで夢の中の様だった。
召使いに大切に扱われて、けれど何一つ自由にならない生活。少年は自らを生きた人形だと思った。
いつしか少年は、笑顔を失っていった。男は…ジークは少年が壊れるのを楽しげに見ていた。
そうしてとうとう少年が何も話さなくなり、何もしなくなった頃、ジークは少年を呼び出した。
「失礼します」
召使いの声に、ジークが顔を向ける。
少年が呼ばれた部屋は広く、重厚な雰囲気の漂う書斎だった。もっとも、壊れてしまった少年の目にそれらは映っていなかったが。
「ジーク様、『彼』をお連れしました」
「…下がれ」
「かしこまりました」
召使いが退出したのを確認して、ジークが少年に近づく。
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